市営地下鉄民営化に向けての自由民主党・市民クラブ大阪市会議員団の考え
を皆様にご報告いたします。
まず、これまでの経過についてです。地下鉄・バスの経営形態については平成17
年の関市長の時代から、10年以上にわたり議論を進めて参りました。橋下前市長時
代の廃止条例案は「事業を廃止します」「施行日は市長が定める日」とたった2行し
か書かれておらず、「市長への白紙委任」 といった内容であったので反対を致しまし
た。
経営形態の変更という意味においては反対しておらずヽ 基本方針を議決対象とす
る、手続き条例の制定や、バスの地下鉄会社の子会社化、鉄道ネットワーク審議会設
置など、自民党の提案によって着実に前進をさせて参りました。
吉村市長においては当初、地下鉄は「完全民営化」を選挙公約として掲げておられま
した。
しかし、これまで歩んできた市営交通の歴史的な経過や多くの税が投入されてきた
ことを考えると、地下鉄事業は、街づくりや都市基盤、都市政策を考える上で、重要
な「社会的資本」「公共財」であり市民の財産であることを強く認識致しました。
そのような前提で、「完全民営化」や「単純売却」ということは到底受け入れられな
いと、昨年の8月に12項目の要望書を提出し、大阪市が100%株を保有する「100%
市民が株主」となる民営化、 株式会社化への大転換を市長に求めました。
吉村市長は、9月の委員会で「当面100%の株を大阪市が持つ。自分の任期中は株
を上場するとか、切り売りするとかは、そんなふうには考えていない」と答弁され私
たちの考えを受け入れられました。
その他、12項目の中で、8号線でのBRT等の社会実験の実施、運転手不足などの問
題を抱えるバス事業への一定の税の投入、赤字路線に対する一定の税負担、そのため
の基金の整備、総合的に交通政策を担う新たな部局や地下鉄会社と大阪市との会議
体の設置、更には大阪市の意見がしっかり反映されるように、大阪市がバス会社の株
を、直接保有することも要望し、おおむね承諾いただきましたので、
昨年の12月に基本方針案に賛成いたしました。
以上の経過を踏まえ、今年3月に廃止条例案に賛成するに至った理由が2つあり
ます。
1つ目は新たに明らかになった「地方交付税の取り扱い」という課題に一定の方向
性がみえたことです。
株式会社化された場合の地方交付税の取り扱いについて、総務省より「株式会社化
プランの内容を前提として、交付税処置を継続する」と回答を得たとの事であり、課
題は解消されました。しかし、その前提は大阪市が100%株を保有する株式会社化プ
ランの内容であると、市長もお認めになりました。
であれば、総務省からきっちりと文書にて回答を受け取ることを、吉村市長の責任に
おいてしっかりと果たしていただくよう要望いたしました。
2つ目は、市営交通が「所有と経営の分離」という道を進むことが安定的・持続可
能な事業運営に資すると考えたからです。この廃止条例案については、永きにわたり
地下鉄が築き上げてきた歴史や、大阪市の発展のために果たしてきた役割、何よりも
大阪市民に愛され、守られてきた、公営企業としての地下鉄の存在意義を十分に理解
しているからこそ、議論に議論を重ねて参りました。
地下鉄事業は大阪市にとって非常に重要な「社会資本」「公共財」との基本認識を
持つ中で、新自由主義的、市場原理主義的発想での民間活用ではなく、「公的な関与」
を維持しながら、少子高齢化・人口減少化など、成熟化社会を迎える中で、市民の移
動の自由をいかに確保するのか、大阪市の都市問題、人口偏在やインナーシティ問題、
集積によるデメりットなどの解消や都市再生への寄与をどう果たしてい<のかとい
う視点から、安定的でかつ、持続可能な事業運営を進めるために「所有と経営の分離」
を行う「株式会社」としての道を歩んでいくことが、必要であると考えました。
今回、私たちが廃止条例案に賛成することは、大阪市が将来に渡って発展していく
姿を思い描く中で、地下鉄事業をいかに充実させていくか、市民の為の事業主体とし
ていかに貢献していくのかという課題に、真剣に向き合った結果であります。新会社
にはその役割をしっかりと果たしていただかなけれぱなりません。
市民の為にならない政策を行うつもりはありません。私たちが進めてきた政策が、
きっちりと着手、実行されるか、今後も厳しくチェックを続けて参ります。